映画「ぼくたちの家族」

原田美枝子さん演ずるお母さんは、物忘れがひどいので認知症ではないかと本人が心配をしているシーンが印象的です。
家族が気が付いたのは長男の嫁の家族との会食で、名前を間違えてしまう。
翌日病院へ連れていく車の中で、誰も想像をしていない病名が伝えられる。

悪性リンパ腫という癌でピンポン玉くらいの大きなおできが脳の中にできているのです。
余命一週間とあいまいな表現で伝えられることに、不安と不満が長男演ずる妻夫木聡さんは、誠意のない態度に粋道理を感じてしまいます。
いのちの時間がない心境は親のこんな状況でしか味合わないものです。
彼の演技と容姿や表情は、こういったシーンで見ているものに、全面に好感の持てるキャラクターの人も役者さんの中でも珍しいのではないだろうか?

次男を演じている池松壮亮さんのセリフのない顏の演技が素晴らしい。家族一丸になってお母さんを助ける行動が偶然だったりする現象は不思議な人の縁が協力するのです。

高校生の頃引きこもりだった兄は母を助けたい気持ちを、ただ黙って全ての諸々の事情をかたずけていく。
人の力は自然に気持ちが湧き出てくれば、大きな力が発露して、同時に体が動き出しているもののようです。

今の時代にどこにでも起こっていそうな20世紀の日本人が本来の日本人を取り戻す映画のような気がしました。
家族の愛を描いた嬉しい作品です。
感動が静かに伝わってきて、日常にある出来事がリアルに、登場人物が魅力的に描かれています。


(C)2013「ぼくたちの家族」製作委員会

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