装いと周囲の目 装い 3-3
「装い」で何より重要なのは,必ず周りの人がその装いを褒めてあげることです。
「今日は特に綺麗だね」とか「すごく似合ってるね」という具合です。私が関係している中には目が不自由な方もいるのですが,その方には今日は何色と何色の洋服を着て,パンツはこういう色よ,襟はこういう色よ,と具体的に説明して自分でイメージを創ってもらうようにしています。
自分が何を着ているのか,どんな物を着ているのか,どんなふうに見えているのか,ということを言葉で説明して,だからお化粧はこういうふうにするよとか,口紅はこの色にするよ,というように言うと,想像の世界では実際の見た目以上にイメージを膨らませることができますから,心がウキウキして喜びが湧いてきます。すると必ず皮膚の色は高揚して,ツヤが出てくるものなのです。
さくら苑ではこのように「装い」を実践していますが,これからの段階として次のようなことを考えています。これは私がボランティアとしてやれる範囲ではないのですが,デザイン的にシンプルで着やすい,そして例えば今までよりも手足が動かしやすいといった具合に機能的なものを作って着てもらう,そこまでの提案ができればと考えています。

それでは「装い」によってどのような効果が得られるか,いくつか実例を紹介したいと思います。
さくら苑に諸節さんという,歩行器を使って歩いている方がいます。
肌の色は少し黒く,髪はベリーショート。紺か茶の矢がすり模様で,スモックのようなデザインの上っ張りがお気に入りです。
彼女の顔立ち自体はとてもシャープで,気持ちが明るくなればとても綺麗な方だと思いますが,着るものがいかんせん暗い色なのです。
そんな彼女もコスメティックセラピーを始めるようになりました。
初めは見てるだけでいいとか、すねたような態度を何度となく繰り返していましたが、実は参加したいのではと感じていました。これはお年寄りによくある表現かもしれません。
あるとき彼女に「諸節さん,綺麗な色を着てみない?」と提案し,次に会ったときに綺麗な色の洋服をプレゼントしました。
すると「私はこんな色は似合わないんだ」とおっしゃいました。本心では喜んでいただいていたようなのですが,それを直接には表現されませんでした。
しかし,それをきっかけにして自然に溶け込むようになり,化粧のときは顔を自らこちらに伸ばしてくるなど積極的な態度に変わっていきました。
基本的に上っ張りが好きな方なので,着るものはあまり変わりませんでしたが,あるとき,綺麗な色を着ていました。
それを褒めたところ,とても嬉しそうな顔をして言葉が優しくなってきたのです。小さな声でつぶやくように話す方なので,何を言っているのか,よくはわからないのですが.自分の気持ちを正直に伝えるということをされるようになってきたように感じます。
出典:矢野実千代(2000) 『高齢者のコスメティックセラピー』一番ケ瀬康子監修,一橋出版

「今日は特に綺麗だね」とか「すごく似合ってるね」という具合です。私が関係している中には目が不自由な方もいるのですが,その方には今日は何色と何色の洋服を着て,パンツはこういう色よ,襟はこういう色よ,と具体的に説明して自分でイメージを創ってもらうようにしています。
自分が何を着ているのか,どんな物を着ているのか,どんなふうに見えているのか,ということを言葉で説明して,だからお化粧はこういうふうにするよとか,口紅はこの色にするよ,というように言うと,想像の世界では実際の見た目以上にイメージを膨らませることができますから,心がウキウキして喜びが湧いてきます。すると必ず皮膚の色は高揚して,ツヤが出てくるものなのです。
さくら苑ではこのように「装い」を実践していますが,これからの段階として次のようなことを考えています。これは私がボランティアとしてやれる範囲ではないのですが,デザイン的にシンプルで着やすい,そして例えば今までよりも手足が動かしやすいといった具合に機能的なものを作って着てもらう,そこまでの提案ができればと考えています。

それでは「装い」によってどのような効果が得られるか,いくつか実例を紹介したいと思います。
さくら苑に諸節さんという,歩行器を使って歩いている方がいます。
肌の色は少し黒く,髪はベリーショート。紺か茶の矢がすり模様で,スモックのようなデザインの上っ張りがお気に入りです。
彼女の顔立ち自体はとてもシャープで,気持ちが明るくなればとても綺麗な方だと思いますが,着るものがいかんせん暗い色なのです。
そんな彼女もコスメティックセラピーを始めるようになりました。
初めは見てるだけでいいとか、すねたような態度を何度となく繰り返していましたが、実は参加したいのではと感じていました。これはお年寄りによくある表現かもしれません。
あるとき彼女に「諸節さん,綺麗な色を着てみない?」と提案し,次に会ったときに綺麗な色の洋服をプレゼントしました。
すると「私はこんな色は似合わないんだ」とおっしゃいました。本心では喜んでいただいていたようなのですが,それを直接には表現されませんでした。
しかし,それをきっかけにして自然に溶け込むようになり,化粧のときは顔を自らこちらに伸ばしてくるなど積極的な態度に変わっていきました。
基本的に上っ張りが好きな方なので,着るものはあまり変わりませんでしたが,あるとき,綺麗な色を着ていました。
それを褒めたところ,とても嬉しそうな顔をして言葉が優しくなってきたのです。小さな声でつぶやくように話す方なので,何を言っているのか,よくはわからないのですが.自分の気持ちを正直に伝えるということをされるようになってきたように感じます。
出典:矢野実千代(2000) 『高齢者のコスメティックセラピー』一番ケ瀬康子監修,一橋出版

コメント
コメントを投稿