コスメティックセラピーのテクニック 化粧 1-6
では、私たちが行っているお年寄りの化粧法を具体的に紹介しましょう。
化粧の仕方は、女性であれば皆さんご存じかと思いますが、お年寄りには時間をかけずに素早く行う必要があります。と言っても、何かを省くということでは決してありません。
まずは「クレンジング」から始めます。これは植物でできた物を使って、できるだけ簡単に顔をクレンジングします。一般に使われるようなティッシュやガーゼではなく、スポンジチーフといって、赤ちゃんの産湯に使う物を利用しており、これが最適です。そういった物を使ってきれいに汚れなどを拭き取り、顔をさっぱりさせます。蒸しタオルも時々行っています。
クレンジング、後すぐに「水分・油分の補給」をします。化粧水をコットンに染み込ませ、顔全体に水分をしっかり与えます。そして、化粧水が乾かないうちに保護クリームで少し油分を与えます。その油分を与えるときに、「ポアンテラージュ」を行います。
これは部分的に指圧をしながら顔をマッサージすることです。顔、特に鼻から上には神経が集中していますので、そこを指圧するととても気持ちがいいものなのです。
特に若い人の場合は、日常生活の中で表情豊かに顔を使っていますので効果があるのですが、お年寄りがどれだけ気持ちがいいのかというのは、実は今でもつかめていません。ですから、反応がある方には少し長めにやってみるとか、反応がない方には首の方までマッサージしてみたりしています。
お年寄りに対してポアンテラージュをすることで、どれだけの効果が出るかというのは私たちにも定かではありません。しかし、皮膚と皮膚が触れ合う、肌が触れ合うだけで、人間は喜びを感じるらしいということはわかっていますので、そういう意味で保護クリームをつけるときに、気持ちを込めてポアンテラージュすることにしています。

次に「ファンデーション」を塗ります。ファンデーションは、リキッドタイプとスティックタイプ、それから粉を主としたパウダリータイプ、大きくこの3種類に分けられますが、サッと伸ばして素早く仕上げれ、ツヤを出すことができるリキッドファンデーションを使います。液体ですので皮膚を傷つけることもありません。それをやはりマッサージするように伸ばしていきます。
そして粉おしろいをたたきます。お年寄りは、パフを使ってパタパタするその行為で、「お化粧をしている」という認識を持つようです。使っている粉は粒子がとても細かい品質の高いもので、本当に桃のようにフワッと仕上がります。
その後、ポイントメークアップに入ってきます。若い人の場合、目のメークアップから入りますが、お年寄りは眉から始めます。眉は「顔の額縁」と言われるほど重要なポイント。役者は眉で役作りするとも言われるほどです。
歳を取ってくると眉毛や髪の毛が薄くなって、メリハリがない顔になります。そして皮膚は痩せてきて(体も痩せてる人が多いですが)、ハリやツヤがありません。血色も良くないので、皮膚の色がくすんできます。老化自体そういうものですから仕方ありませんが、その結果、より動物的な顔になってくるわけです。ですからまず、顔の額縁である眉をしっかり書き、顔のメリハリを付けていくのです。
アイシャドウは粉末のものを使います。アイブローペンシル(眉鉛筆)を使うと、みなさん縦ジワや横ジワがありますので、その深いシワでペンシルがすべりにくく、また、皮膚の表面が乾燥した状態になっていますので、色がつきません。ですからパウダーで仕上げるのが、早く綺麗に仕上げるコツなのです。
ダークブラウンやグレーや黒の粉のアイシャドーと筆を使って、皮膚の中に入れていくように描いていき、表情が優しく柔らかく見えるようにするとよいでしょう。このとき、少し皮膚を引っ張って、緊張させてから描きます。若い人のように細くて流れるような表情の眉毛でなくても構いません。眉頭を強くすれば、そこにその人の意思の強さを表すことができます。
眉の次は目元に移ります。まぶたはちりめんジワがあり、そこがテカったり、くすんだりしています。この対策として目元がほんのり明るく見えるようにするとよいでしょう。
目の周りの柔らかいピンクを、ただし綺麗なピンクはくすんだ肌には白っぽく見えますので、コーラルピンクのような、ちょっと彩度の低い色を使うと目の周りを明るく見せることができます。
次は頬です。頬紅は綺麗な色を若い人よりも少し濃く付けます。本当に明るいペールトーンの色では、白っぽ仕上がってしまいますので、少し強めに出るピンクやオレンジ、また、ちょっとレンガっぽい色をミックスして、頬紅を強調させると効果的です。
羊の毛の大きなブラシで色をたくさん取って、ポンポンポンと乗せるような感じで頬紅をさすと、花が咲いたような明るい顔になってきます。
目元や頬に入れる赤という色は、女性の色気、恥じらいを表すものです。心が高揚すると頬や目元がちょっと赤くなります。ですから、このように赤をさすことは日本の化粧の原点と言えます。
そして最後に口紅です。お年寄りだから少し色目の目立たない色にするというのが、普通の社会生活の中での考え方ですが、私たちは濃いめの赤やビビットなピンクを意識して付けています。入れ歯をしていない人、あまりしゃべらなくなった人などは唇も痩せてきて、しかも唇自体が唾液でほとんどが濡れていて粘膜の状態になっています。そのような状態だと色がのっていきませんから、口紅をさすときは、できるだけ普通の皮膚を出すために、キスをするように唇を出してもらいます。若い人のように線が綺麗にならなくても構いません。唇の山がしっかり綺麗にかけなくても、色をのせるという行為をすることが一番大事だと思っています。全体にたるんだ張りの無い肌の顔に唇の輪郭だけがはっきりしていると、かえって奇異に感じますから。
全体の化粧のバランスを考えると、眉の形をしっかり書けば、柔らかい暖色系の唇、目元、頬がより引き立って見えてきます。これはどんな方にも共通したお年寄りの化粧のポイントです。
ですからフルにメークする必要はありません。ポイントメークで、アイラインやマスカラを若い人のようにつけると、目の周りは特に40代から老化現象として、涙が出やすくなる傾向があります。ちょっとした刺激にも個人差はありますが、瞼の筋肉が弱くなり、アイラインやマスカラをつけることでうっとうしさを感じ、違和感を持ちますので注意しましょう。
出典:矢野実千代(2000) 『高齢者のコスメティックセラピー』一番ケ瀬康子監修,一橋出版

化粧の仕方は、女性であれば皆さんご存じかと思いますが、お年寄りには時間をかけずに素早く行う必要があります。と言っても、何かを省くということでは決してありません。
まずは「クレンジング」から始めます。これは植物でできた物を使って、できるだけ簡単に顔をクレンジングします。一般に使われるようなティッシュやガーゼではなく、スポンジチーフといって、赤ちゃんの産湯に使う物を利用しており、これが最適です。そういった物を使ってきれいに汚れなどを拭き取り、顔をさっぱりさせます。蒸しタオルも時々行っています。
クレンジング、後すぐに「水分・油分の補給」をします。化粧水をコットンに染み込ませ、顔全体に水分をしっかり与えます。そして、化粧水が乾かないうちに保護クリームで少し油分を与えます。その油分を与えるときに、「ポアンテラージュ」を行います。
これは部分的に指圧をしながら顔をマッサージすることです。顔、特に鼻から上には神経が集中していますので、そこを指圧するととても気持ちがいいものなのです。
特に若い人の場合は、日常生活の中で表情豊かに顔を使っていますので効果があるのですが、お年寄りがどれだけ気持ちがいいのかというのは、実は今でもつかめていません。ですから、反応がある方には少し長めにやってみるとか、反応がない方には首の方までマッサージしてみたりしています。
お年寄りに対してポアンテラージュをすることで、どれだけの効果が出るかというのは私たちにも定かではありません。しかし、皮膚と皮膚が触れ合う、肌が触れ合うだけで、人間は喜びを感じるらしいということはわかっていますので、そういう意味で保護クリームをつけるときに、気持ちを込めてポアンテラージュすることにしています。

次に「ファンデーション」を塗ります。ファンデーションは、リキッドタイプとスティックタイプ、それから粉を主としたパウダリータイプ、大きくこの3種類に分けられますが、サッと伸ばして素早く仕上げれ、ツヤを出すことができるリキッドファンデーションを使います。液体ですので皮膚を傷つけることもありません。それをやはりマッサージするように伸ばしていきます。
そして粉おしろいをたたきます。お年寄りは、パフを使ってパタパタするその行為で、「お化粧をしている」という認識を持つようです。使っている粉は粒子がとても細かい品質の高いもので、本当に桃のようにフワッと仕上がります。
その後、ポイントメークアップに入ってきます。若い人の場合、目のメークアップから入りますが、お年寄りは眉から始めます。眉は「顔の額縁」と言われるほど重要なポイント。役者は眉で役作りするとも言われるほどです。
歳を取ってくると眉毛や髪の毛が薄くなって、メリハリがない顔になります。そして皮膚は痩せてきて(体も痩せてる人が多いですが)、ハリやツヤがありません。血色も良くないので、皮膚の色がくすんできます。老化自体そういうものですから仕方ありませんが、その結果、より動物的な顔になってくるわけです。ですからまず、顔の額縁である眉をしっかり書き、顔のメリハリを付けていくのです。
アイシャドウは粉末のものを使います。アイブローペンシル(眉鉛筆)を使うと、みなさん縦ジワや横ジワがありますので、その深いシワでペンシルがすべりにくく、また、皮膚の表面が乾燥した状態になっていますので、色がつきません。ですからパウダーで仕上げるのが、早く綺麗に仕上げるコツなのです。
ダークブラウンやグレーや黒の粉のアイシャドーと筆を使って、皮膚の中に入れていくように描いていき、表情が優しく柔らかく見えるようにするとよいでしょう。このとき、少し皮膚を引っ張って、緊張させてから描きます。若い人のように細くて流れるような表情の眉毛でなくても構いません。眉頭を強くすれば、そこにその人の意思の強さを表すことができます。
眉の次は目元に移ります。まぶたはちりめんジワがあり、そこがテカったり、くすんだりしています。この対策として目元がほんのり明るく見えるようにするとよいでしょう。
目の周りの柔らかいピンクを、ただし綺麗なピンクはくすんだ肌には白っぽく見えますので、コーラルピンクのような、ちょっと彩度の低い色を使うと目の周りを明るく見せることができます。
次は頬です。頬紅は綺麗な色を若い人よりも少し濃く付けます。本当に明るいペールトーンの色では、白っぽ仕上がってしまいますので、少し強めに出るピンクやオレンジ、また、ちょっとレンガっぽい色をミックスして、頬紅を強調させると効果的です。
羊の毛の大きなブラシで色をたくさん取って、ポンポンポンと乗せるような感じで頬紅をさすと、花が咲いたような明るい顔になってきます。
目元や頬に入れる赤という色は、女性の色気、恥じらいを表すものです。心が高揚すると頬や目元がちょっと赤くなります。ですから、このように赤をさすことは日本の化粧の原点と言えます。
そして最後に口紅です。お年寄りだから少し色目の目立たない色にするというのが、普通の社会生活の中での考え方ですが、私たちは濃いめの赤やビビットなピンクを意識して付けています。入れ歯をしていない人、あまりしゃべらなくなった人などは唇も痩せてきて、しかも唇自体が唾液でほとんどが濡れていて粘膜の状態になっています。そのような状態だと色がのっていきませんから、口紅をさすときは、できるだけ普通の皮膚を出すために、キスをするように唇を出してもらいます。若い人のように線が綺麗にならなくても構いません。唇の山がしっかり綺麗にかけなくても、色をのせるという行為をすることが一番大事だと思っています。全体にたるんだ張りの無い肌の顔に唇の輪郭だけがはっきりしていると、かえって奇異に感じますから。
全体の化粧のバランスを考えると、眉の形をしっかり書けば、柔らかい暖色系の唇、目元、頬がより引き立って見えてきます。これはどんな方にも共通したお年寄りの化粧のポイントです。
ですからフルにメークする必要はありません。ポイントメークで、アイラインやマスカラを若い人のようにつけると、目の周りは特に40代から老化現象として、涙が出やすくなる傾向があります。ちょっとした刺激にも個人差はありますが、瞼の筋肉が弱くなり、アイラインやマスカラをつけることでうっとうしさを感じ、違和感を持ちますので注意しましょう。
出典:矢野実千代(2000) 『高齢者のコスメティックセラピー』一番ケ瀬康子監修,一橋出版

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